「働き方改革」の一環として、政府が副業を推し進めている昨今。
医療・介護業界でも、以前より働き方が多様化してきました。
YouTuber、オンラインサロン運営、起業…。
はたまた、本業とはまったく関係ないビジネス。
なかには、自分らしく働き、同時に収入を上げるなど、大きく飛躍している人がいます。
しかし一方、あたらしいことに取り組んでは挫折し、また別のことに飛びつく。そんな出口のない迷路をグルグルと回り続けている人もいます。
この2つの道を分ける要因は、いったい何なのでしょうか?
その答えを知るべく、『医療・介護職の新しいキャリア・デザイン戦略』の著者である、国家資格キャリアコンサルタントで作業療法士の細川寛将さん(@hosokawa777)に、お話を伺ってきました。
<聞き手=福井龍太郎(Archリハビリテーション代表)>
細川 寛将(ほそかわ・ひろまさ)さん

多くの人が見落としがちの「キャリアの本質」とは?


この現状を、細川さんからみてどのように感じていますか?



要は、自分自身で尻拭いをしていかないといけない。
その手前、本来であればキャリアのリテラシーを高めていく必要があるにも関わらず、多くの方はいまだにハウツーを追い求めているんですよ。



それよりも大切なことって、いったい何なんですか?

しかし、もっと本質的な部分は「“なぜ”やりたいのか?」ということ。
これを考えておかないと、途中で「あれ? なんでこんなことやってるんだっけ?」と自分を見失う可能性があります。


わたしが医療・介護職向けにキャリアコンサルをはじめたのも「このままじゃキャリアで悩む人が増えてしまう」という危機感を抱いたことがキッカケなんです。
【成長しない人の特徴:その1】 成果を意識していない


この2パターンの方々の違いに、なにか特徴はありますか?

より具体的にいうと、「成果」と「満足度」が混同している人です。


たとえば、セミナーに行ったという事実だけで満足する人がそう。
さらにマズい状態が、職場の同期や先輩から「休みの日にセミナーに参加するなんてエライね」という言葉だけで満足しているケースですね。


「成果を出せたか、出せなかったか」を重要視しています。

医療・介護職の方々は、なぜ成果を出すことに意識が向きにくい傾向にあると思いますか?

医療・介護職は「だれ」が 「なに」をやっても職種内で成果が一定である“保険”というプラットフォームにいるからだと思います。
それがすべてじゃないですかね。


たとえば、与えられた仕事だけでなく、自ら課題をみつけて、職場に対して業務改善を提案していく。
あとは、職場の了解が得られるなら、個人事業でいろいろとやってみるのも良い経験になりますよ。
【成長しない人の特徴:その2】 投資意識と回収意識が低い



自己投資の意識が低い、ということについてはみなさんイメージしやすいと思います。
たとえば、「なにもしなくても、あと数年やり過ごせば技師長になって給料が上がるかな」という自己投資をまったくしない人。
かたや、「将来的には病院経営にたずさわりたいから、数年間収入が下がってでも、MBA(経営学修士)を取得しにいこう!」と積極的に自己投資していく人。
当然ですが、後者の方が将来的にキャリアの選択肢や、収入に大きな差が出てくる可能性が高いということはいうまでもありません。


先ほどの例でいうと、セミナーには参加しているけど、周りからの「がんばってるね」という賛辞だけで満足している人ですね。
これは投資ではなく“投棄”です。
言い方は悪いですが、お金をドブに捨てているようなもの。
そのため、「投資した分、しっかりと回収できているか?」ということも、自分に問いかけていく必要があります。


あとは、「昇進」だったり「以前よりも治療成果が上がった」などですかね。
あと、わたしの場合は「やりたいことを主導権にぎって、主体的に意思決定できるか?」ということも、ひとつの投資対効果として考えています。
【成長しない人の特徴:その3】 短期的な思考

要は、目の前のことばかりに集中していて、まわりがみえていない状態です。
そうすると、目の前の悩みに振り回されて、場当たり的な行動を取りがちになります。


そんな出口がない迷路をグルグルと回っているケースが多いですね。
そうなると、毎回ゼロからのスタートなので、なかなかキャリアが積み上がっていかないんですよ。
キャリア人生のすべては「自己理解」からはじまる


短期的な思考におちいってしまう理由はなぜだと分析していますか?

つまり、自分のことをしっかりと理解しているか?ということです。
自分が大切にしている価値観がわかっていないから、物事の決断や判断にブレが生じてしまうのだと思います。

その結果、「やっぱり合わないからやめよう」と挫折しちゃう。

さらに、自分の大切なものを見失っていると、自分自身の評価を傷つける行動をとる可能性もあります。
その結果、最悪、医療・介護職としての人生が絶たれてしまうこともあるかもしれません。
価値観という軸があれば、仮にまわりから怪しい儲け話を持ちかけられても「それって本当に自分がやりたいことなのか?」と冷静に判断することができます。


わたしのまわりでも、大きく飛躍している方は自己理解力がとても高いです。

では、自分のことを理解するためには、どうすればいいんですか?

たとえば、「自分が大切にしていること」「譲れないこと」「やりたいこと」などを紙に書き出してみる。
そうやって、自分のなかのコアな部分を言語化することが重要です。
自分の「価値観」と「強み」を知るための方法とは?


このワークはひとりでもカンタンにできるのでオススメです。
では、早速やり方をお伝えしていきますが、まずは9マスの紙を準備してください。


そして残りの8マスに、“自分の価値観”を自由に書き出しましょう。
たとえば、「自分がこれまで大切にしてきた考え」「両親や家族からよく言われたこと」「自分の信念」などです。
時間はだいたい【3分】ほどで、無理にすべてを埋める必要はありません。
このワークの目的は、自身が大切にしている価値観を俯瞰すること。
さらに、書き出した価値観のなかから、自分の強みの源泉をみつけることもできます。


これは、ウェブ上で100個以上の質問に答えていくことで、自分の資質と強みを客観的な指標として出してくれるサービスです。
そして、私も一部関わらせていただいている『ポテクト』もオススメですね。
自分の「価値観」や「強みの源泉」の輪郭をより明確にしたい方は、ぜひ取り組んでみてはいかがでしょうか。
“社会に対する課題意識”がある人は伸びやすい


そのほかに、飛躍する人の特徴ってありますか?

わたしと同世代で、年収1,000万円以上かせいでいるセラピストは、とにかく社会や業界に対する課題意識が高いですね。


「自分たちの業界が良くなるためにはどうすればいいんだろう?」
このように、目の前のことだけじゃなく、社会全体まで視野を広げて物事を考えています。
そういった方々はものすごく成長が早く、かつ大きく飛躍していますね。
居酒屋での戯言、批判で終わらせない

課題を抽出したら、自分たちにできることを洗い出して、実行プランまで落とし込むことが重要です。
実行プランを立てたら、あとは実際に行動にうつしてPDCAをたくさん回していくだけです。


「不景気なのは社会の構造が悪いからだ」
このような、居酒屋でしているような戯言、批判だけで終わっているようでは、自分の手でより良い未来をつかむことなんてできません。
とにかく「課題意識を持って行動」。それに尽きます。
未来に可能性を感じている人とつながる


そして、できればそういった方々と一緒にはたらくのもオススメです。
わたしの場合だと、『株式会社メディカルエージェンシー』の代表取締役・輪違さんと、リハビリメディア『POST』の編集長・今井さんとの出会いが大きかったですね。


『POST』は、わたしが27歳のときに彼ら2人といっしょに始めたメディアです。
しかし立ち上げ当時、わたしは結婚などで忙しい時期だったんですね。
ただ、「彼らと一緒なら未来を創っていける」と確信したため参画しました。
いまでもそのときの選択は間違っていなかったと思います。


“グリット”を持って行動してほしい



しかしわたしは逆だと思っていて、「PT・OT・STにはものすごく可能性がある」と感じています。
なぜなら、マーケットに対して価値提供できるような人材になれば、可能性は大きく広がる職種だからです。
とはいえ、たとえば「就職はとりあえず病院かな」というようなステレオタイプの思考だと、ジリ貧となって、どんどん厳しくなっていくのは事実です。あおるわけではないですが。
そのため、目先のことだけを考えず、いろんなことを自分自身で考えられる思考力も養ってもらえたらと思います。
そして最後にお伝えしたいこと。
「あたらしい一歩を踏み出そう」もしくは「あたらしいフィールドに移ろう」と決心した方は、グリット(やり抜く力)を持って行動してほしいと願っております。
今回の話が、キャリアで悩む方々の一助になれば幸いです。
編集後記
わたしもキャリアで悩んでいる方のお話を聞く機会があるのですが、なかでもよく聞くことが「自分がなにをやりたいのか分からない」です。
その解決方法のひとつが、今回のインタビューでも細川さんがおっしゃっていた“自己理解”だと思います。
まずは一度、自分の「価値観」や「能力」などを棚卸しして、その上でどのようなキャリアを積んでいくかを戦略的に考えてみる時間を作ってみてはいかがでしょうか?
また、細川さんと三好さん(@takayukimiyosh1)の共著である『医療・介護職の新しいキャリア・デザイン戦略 〜未来は、自分で切り拓く〜』では、さらに詳しくキャリア戦略について書かれています。
興味のある方はぜひ一度手にとってみてください。

さらに、細川さんから直接キャリアのアドバイスをもらえる『個別キャリアエージェント』というサービスもあります。
現在60名ほど参加されており、今年の4月から新たに【10名】のみ募集するとのことです。
「もっと自分らしく働きたい!」「自分の望むキャリアを歩みたい!」という方は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか?
それでは、今回の記事がキャリアで悩んでいる方々のお役に立つことができれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。